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WEB特集 そのゲーム実況、告訴されるかも | NHKニュース

そのゲーム実況、告訴されるかも

ご存じですか?「ゲーム実況」。
ゲームをしながらその様子を撮影し、YouTubeなどに配信する行為のことです。対戦型の格闘ゲームやスポーツゲームでは、投稿する人がテクニックを披露し、見る人はその技を楽しむ。こうした楽しみ方は世界に広がり、愛好者は8億人を超えるとまで言われています。
メジャーなユーチューバーから一般の人まで、競うように投稿し、ゲーム実況は新たなエンターテインメントとして認知度を高めていますが、実はいま、著作権をめぐるトラブルが問題になっています。あなたのその投稿が、もしかしたら刑事告訴されるかもしれません。(社会部記者 田畑佑典)

「刑事告訴を検討」突然の警告

ことし9月、神奈川県に住む20代の男性のもとに1通のメールが届きました。

「貴殿が警告を殊更に無視してライブ配信を続行したことなどから、悪質性が高いとして著作権侵害を受けたことに対し刑事告訴を検討しております。反省等がある場合、直ちに当職まで連絡ください」

ゲーム会社の代理人という弁護士からのメールにはこう書かれていました。

男性は「まさに寝耳に水だった」と言います。

ただ、心当たりはありました。

2か月半ほど前に行った、あの「ゲーム実況」です。

「やっていきますか、デスカムトゥルー。やばい、配信自粛だって。困った、配信やめる?」
「困りましたね、自粛してくれと言われたらできない…。でも、まあやるか」
(違法配信した動画に入っている男性の声)

男性が投稿したゲーム実況はゲーム制作会社「イザナギゲームズ」が発売した「デスカムトゥルー」というソフトです。

冒頭、プレイ動画の配信は控えるよう警告があり、男性は一瞬迷いましたが、結局そのまま2時間ほど配信しました。

このゲームはことし6月に発売。

有名な俳優などが出演する実写形式のゲームで、プレーヤーは物語中の選択肢を選びながらストーリーを進め、エンディングを目指します。

ゲーム会社側はゲーム実況によってストーリーが明かされれば「ネタバレ」となり、ユーザーの購入意欲をそぐと危機感をもったのです。

弁護士と違法配信の男性の面談を独自取材

会社側は「著作権侵害」としてアメリカの裁判所への申し立てを行い、YouTube側から情報開示を受けて男性を特定。

刑事告訴を検討するというメールを送りました。

このメールから1か月後の10月下旬、男性は東京・新宿にある法律事務所を訪れ、会議室で弁護士と向き合いました。

男性はスーツ姿。

少し気弱で真面目な青年という印象で、緊張していました。

そこで行われたやりとりです。

※双方に許可をとって取材しています

(弁護士)私からの連絡を受けてから本日までどういう気持ちでしたか。

(男性)申し訳ない気持ちでいっぱいです。

(弁護士)なぜ違法アップロードをしてしまったのですか。

(男性)犯罪にはならないだろうと思ってしまったことと、閲覧する方の数がそんなに多くなく、多くても10人いかないだろうという気持ちと、あとはすぐに削除すれば問題ないだろうと思ってしまってそのまま続行してしまいました。

(弁護士)はじめに配信禁止のアナウンスが出たあとに「配信やめる?」などと迷っていたのは、違法性や悪いことだと認識があったということですか。

(男性)はい、そうです。

(弁護士)犯罪につながるということも考えましたか。

(男性)犯罪まで、著作権侵害までなるとは思っていなかったです。

男性は会社側に対して丁寧に謝罪しました。

会社側は男性による今回の違法配信による被害額は数百万円と推定しています。

ただ、男性の謝罪が真摯なものだったとして、検討していた刑事告訴は行わないことにしました。

NHKのインタビュー取材に対し、男性はこう話しています。

違法配信をした男性
「多くの人がYouTubeにあげているので、自分もやって大丈夫だろうと思って始めたんです。配信しているときにコメントをくれる人がいたりとか、自分の動画を見返したりできるのがすごい面白かったですね。まさかアップロードして問題になる作品があるということまでは考えていなかったので…」

ゲームにも映画と同じく著作権がある

イザナギゲームズの代理人
東京フレックス法律事務所 中島博之弁護士
「ゲームの映像というものは著作権法上『映画の著作物』として保護されている。これは映画を無断で違法にアップロードすることと変わらないということになる。視聴回数を増やして広告収益を得たいとか、自分が投稿した動画をたくさんの人に見られたいというモチベーションがアップロードした側にはある。『ゲーム実況』という言葉が生まれ、よりカジュアルな印象になったためアップロード行為が違法だと考える機会が少ないのではないか」

「デスカムトゥルー」の違法配信は11月までに確認できただけでも、300件超。

多いものだと10万回以上再生されていました。

イザナギゲームズ 梅田慎介代表
「率直な気持ちとして残念。このゲーム開発というのは非常にお金がかかり、今回のゲームも数億円というお金がかかっている。購入したユーザーがばかを見ることになるし、会社としても大きな損失だ」

ゲーム実況を歓迎する会社も

KADOKAWA Game Linkageが発行する「ゲーム実況グローバルマーケットレポート2017」によると、ゲーム実況の市場規模は世界で46億ドル。

視聴者は2021年までに8.1億人にのぼると推計されています。

今後も市場の拡大が続くとみられる中、ストーリー性を重視するソフトではゲーム実況が制限される一方、ゲーム実況を歓迎する会社もあります。

その代表格が、ゲーム業界の雄、任天堂です。

「スーパーマリオ」や「あつまれ どうぶつの森」などで知られる任天堂は2年前にガイドラインを公表。

ガイドラインを守ることを条件に、個人や契約した法人がゲーム実況を行うことを推奨しているのです。

このガイドラインからは広告効果への期待がうかがえます。

「当社は当社が創造するゲームやキャラクターなどに対して、お客様が真摯に情熱をもって向かい合っていただけることに感謝し、その体験が広く共有されることを応援したいと考えております。お客様の体験が広く共有されることで、その分、愛着を持っていただける方も、増加するのではないかと期待しております」

11月に発表された任天堂の中間決算は最終利益が2131億円と去年の同じ時期の3.4倍に。

新型コロナウイルスの影響で巣ごもり需要が伸びたことに加え、ゲーム実況も好調の要因の1つとみられています。

登録視聴者が100万人を超える人気ユーチューバーも、ゲーム会社が認めたソフトで次々にゲーム実況を投稿。

配信した動画による広告収入も伸び、ゲーム実況はエンターテインメントとしてだけでなく、ビジネスとしても注目のジャンルとなってきています。

業界有数のユーチューバー事務所「UUUM」市川義典取締役
「自分が子どものころはゲームがすごくうまい方がプロゲーマーとしていらっしゃったが、今は、ユーチューバーなどクリエイターがゲーム実況を発信することで、新しいヒーローが輩出されている。ゲーム好きではない方も楽しんでいただけるコンテンツの1つになっている。ゲームメーカーのガイドラインを順守しながらクリエイターが活躍できる土壌を拡大していきたい」

KADOKAWA Game Linkage 林克彦ファミ通グループ代表
「ガイドラインを事前に確認をして、それをまず順守すること。そのうえで視聴者が興味を持てば、自分でも手に取って遊んでみようという意識になる。そういった良いサイクルとして広がってほしい」

ルールを守ってゲーム実況を

現状では、会社やゲームソフトが何を「売り」にしているかで、ゲーム実況に対する対応が分かれています。

イザナギゲームズは「デスカムトゥルー」の発売にあたり、Twitterでも違法配信は自粛するよう呼びかけていました。

しかし、投稿に寄せられたコメントのなかには「配信自粛でゲームが売れると思っているのか」、「実況者が広めてくれているのに何事だ」などというコメントが並んだということです。

本来の著作権者はゲーム会社で、動画配信を認めるかどうか判断するのもゲーム会社です。

イザナギゲームズも「ゲーム実況そのものを批判したくはない。ただ各ゲーム会社では動画配信を認めるもの、認めていないものがある、ということをユーザーには理解してほしい」と話していました。

映画や漫画などと同じくゲームにも著作権があるという前提を、いま一度ユーザー側が認識しておく必要があると思います。

社会部記者
田畑佑典

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