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東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]

一度は見たことがあり、訪れたこともあるような、東京に残っている戦後のモダニズム建築。建物がつくり出すノスタルジックな空間で、おいしい料理を味わってみませんか? 東京・有楽町にある東京交通会館と東京会館「銀座スカイラウンジ」をご紹介します。
(文 鈴木伸子 写真 新居明子)

東京・JR有楽町駅京橋口を出ると、駅前の東京交通会館の屋上にUFOのような円形の物体が見える。それは、約80分に1周というペースで360度回転している銀座スカイラウンジだ。東京駅や新幹線などの線路、丸の内、銀座と、次々と移ろう都心の風景をあらゆる角度から眺望できる。

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

銀座の街角から回転スカイラウンジを見上げる

このような回転スカイラウンジは、1960〜70年代に全国的に流行し、最先端の観光スポットとして注目された存在。当時子どもだった私は、両親や祖父母に連れられて、都内や、横浜の回転スカイラウンジに連れて行ってもらっては、楽しい思いをした記憶がある。

それから約半世紀を経て、今も都内で回転し続けているのは、東京交通会館の最上階(屋上)で今年55周年を迎えた「銀座スカイラウンジ」だけ。そうした意味でも貴重な場所なのだ。ここは西洋料理の老舗でもある東京会館が経営するレストランで、東京会館の味をカジュアルな雰囲気で楽しむことができる。

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

窓に沿って配置された席からは、銀座を中心とした都心の景色を一望できる。すべての席が特等席

看板メニューは、「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」「牛フィレ肉のグリエ ロッシーニ風」などの伝統的なフランス料理。調理長の近藤洋之氏によると、本場フランスでも、このようなフランス料理をメニューに置いている店は、今は数少ないのだとか。昼のメニューには、オムライスやカレーといった洋食料理もある。オムライスのチキンライスは、手間をかけて作られたドミグラスソースとともに炒めたもの。カレーもブイヨンを用いて煮込んであり、フランス料理の伝統的な技法を用いる。

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

この店に来たらぜひ味わいたいのが「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」だ。1922(大正11)年に東京会館が創業した直後からの伝統の味で、館内にある魚介料理レストラン「プルニエ」の名を高めた代表的な料理としても知られる。テーブルに運ばれてきた舌平目は、黄金色のソースに覆われ、その表面にはおいしそうな焼き色がついている。香りたつバターとオランデーズソースは、まさに古きよき時代からの西洋料理を象徴するもの。ふっくらと白ワインで蒸し焼きされた舌平目をソースとともに味わうと、なんとも言えない豊かで幸せな気分になる。さらに、濃厚で風味豊かなソースをフランスパンと一緒に堪能する。

食事をしながら窓の外を眺めていると風景が移ろい、これは回転スカイラウンジという場でなくては味わえないものだと毎度実感する。しかし、中にはここに食事に訪れても、店を出るまで円形フロアが回転していたことに気づかない人もいるというから、身体感覚も、同じ空間で見ているものも、本当に一人ひとりで違うということなのだ。

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

ランチ、ディナーで伝統のメニューをいただくのもよいが、私は時々、昼夜の営業時間の合間のティータイムにこのラウンジを利用している。ここは、まさに都心の穴場。平日の午後などは空いていることもあり、ゆったりとした眺めのいい空間を思いきり楽しむことができる。「鉄道マニア修行中」でもある私としては、ほどよい高さから、東海道新幹線や山手線などの列車の行き来をぼんやりと眺め続けていられるのも大きな魅力だ。

そんなひと時には、東京会館のデザートとして人気の高い「マロンシャンテリー」を味わってみたくなる。栗の甘露煮を3度裏ごしして、ふんわりとした状態に形づくり、生クリームで華やかにデコレーションしたお菓子は、見かけも味わいもエレガント。多くの人々が勤勉に働いている時間帯に、ゆったりとこんなぜいたくなお菓子を味わっていることには背徳感さえ感じてしまう。繊細なお菓子であるマロンシャンテリーは、意外にもテイクアウトすることができるので、このお菓子の熱心なファンには喜ばれていることだろう。

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

「マロンシャンテリー」飲物とセットメニューで2200円(税込み・サービス料別)。テイクアウトのみも可能(980円・税込み)

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

銀座スカイラウンジは今年55周年。何度かのリニューアルを経ているそうだが、12月30日にいったん閉店し、半年間のリニューアル期間を経て来年夏に再オープン予定

東京交通会館のエントランスホールに入ると、正面には地階から3階までの階段があり、壮大なスケールのモザイクタイル壁画が目に入る。

壁画の作者である矢橋六郎(やばしろくろう)は、もともと画家として活動していたが、60年代以降のビルにこのようなモザイクタイル壁画の作品を数多く残している。東京交通会館付近だけでも、丸の内の国際ビル、新東京ビル、有楽町電気ビル、地下鉄千代田線日比谷駅などでその作品を見ることができる。

矢橋作のモザイクタイル壁画は、近年、再評価されていることもあり、ビルの建て替え時に保存し、新築されたビル内に再設置されるようになった。時代が生み出した夢のある空間「銀座スカイラウンジ」と、時を経て作品としての輝きを増しているモザイクタイル壁画は、ともに落成時から残るこの建物一番の見どころだ。双方を一つの建物内で味わえることが素晴らしい。

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

大理石を用いたモザイクタイル壁画「緑の散歩」

東京交通会館は築55年。東京オリンピックが行われた1964年の翌年、65年に「東京ニューセンター」というキャッチフレーズでオープンした、東京都心の新たなランドマークだった。当時としては高層である15階建て。東京交通会館というビル名は、戦前から有楽町駅前には東京都庁があり、徐々に規模が膨張していって本庁舎内には入り切らなくなった東京都の交通局が、このビルの落成時に5階から8階に入居したことに由来する。

有楽町駅前にあった都庁は91年に新宿に移転し、その跡地は東京国際フォーラムに建て替わるなど周辺の環境はずいぶんと変化した。そんな中でも、かつて“そごう”デパートが入居していたビックカメラ有楽町店の建物や、有楽町ビル、新有楽町ビルといった60年代にできたオフィスビルは健在だ。ガード下の居酒屋や焼き鳥屋などの飲み屋街はにぎやかで、今も昭和の雰囲気が漂う場所であり続けている。

東京交通会館が開館して以来、営業を続けている店舗は、銀座スカイラウンジと地下のすし店、喫茶店など数店のみ。当時の面影を探しながらの食べ歩きも、このビルならではの楽しみだ。

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

JR有楽町駅の銀座側に出ると目の前に現れる(写真左)。銀座スカイラウンジから、線路の眺望は抜群(写真右)

東京・有楽町駅前に空飛ぶ円盤!? 昭和の面影が残る回転スカイラウンジ

銀座スカイラウンジ
住所:東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館15F(MAP)
電話番号:03ー3212ー2775
https://www.kaikan.co.jp/branch/skylounge/

ランチは3300円から、ディナーは5500円から。「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」4000円(ハーフサイズは2800円)はアラカルトでも注文可能(いずれも税込み・サービス料別)

※メニュー、価格、営業時間は変更する場合がありますので詳しくはHPをご確認ください。

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