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パンデミックからマスメディアによる炎上まで、2020年に人々はTwitterで何を語ったのか:Twitter Japanインタヴュー | WIRED.jp

ソーシャルメディアはこの10数年で世界を大きく変えてきた。そして、あらゆるテクノロジーがそうであるように、社会に対して大きな影響力をもつことで、同時に、社会のよい面と悪い面を顕在化し、増幅する装置にもなっていった。

2020年はある意味でそれを象徴するような年だった。パンデミックによるロックダウンで、ますます多くの人がオンラインやソーシャルメディアの情報に頼るようになったことで、そこに生じる社会の負の部分もまた、大きく増幅されていった。その結果、いまやソーシャルメディア叩きといえるものが、国内外問わずに起こっている。

だがそこでは、プラットフォーム自体と、その中で起こっていることが区別されずに語られているのも事実だ。あるいは、ソーシャルメディアでの炎上をマスメディアがつくり出す構図も見えてくる。果たしてソーシャルメディアで何が起き、プラットフォーム企業はその責任と権限をどう考えているのか。Twitterが考えるソーシャルメディアのあり方について、激動の2020年を振り返りながら、改めてTwitter Japanに訊いた。

Twitterのビッグデータから見た2020年

──まずは2020年という特異な年に、Twitterから見る人々の変化とはどういうものだったのかを教えてください。パンデミック下のツイートデータから「ツイートで刻まれる歴史 History in the Tweeting」というインサイト集をまとめられています。

橋本昇平(Twitter Next[ブランド戦略担当部署] 以下:橋本) ラウンドテーブルの場で識者の皆さんのご意見も取り入れながら分析しているのですが、認知科学などを研究されている早稲田大学の渡邊克巳教授は、人々の感じていること、思っていることがツイートとして現れ、しかもそれが残るところがTwitterならではの価値だとおっしゃっていました。特に2020年のような時代に、人々が迎えている生活状況や、感じていたことをツイートデータとして振り返ることで、面白い影響を及ぼすんじゃないかと。

インサイトのなかに、「試行錯誤を余儀なくされ、あらゆる気付きが芽生えている」という話が出てきます。いままでも人々はもちろん試行錯誤をしてきたわけですが、それをほかの人に伝えたいという気持ちがあったりとか、よかったよとか、あるいは全然これはよくなかったというツイートデータがあって、それを深読みすることによって新しい兆しが見えてくる。それは企業のマーケティング活動においても、役に立つヒントになるだろうと思っています。

──今回の「ツイートで刻まれる歴史」では、パンデミック下の世界の変化をツイートデータから7つのトレンドとして抽出しています。「気を紛らわせる感情ツイート」「深まるコミュニティの絆」「離れていてもつながっている」「新たなクリエイティビティ」「もう1つのエピデミック」「ゆっくりを受け入れる」「とっ散らかる倫理観」の7つですが、そのなかでこれは来年に向けて大きなテーマになるのではという、手応えを感じられているものはありますか。

橋本 有識者からのお話のなかで、電通若者研究部の西井美保子さんがおっしゃっていた若者の傾向が興味深かったです。いまやあらゆる論調に分かれている時代に、自分はこう思うと発言する人たち、態度表明をする人たちがクールだという傾向があるんじゃないかと。それに対してはブランドも何かしらのスタンスを見せるべきだというのは、いままで欧米では一般的であったものの、日本企業では敬遠しがちなことでした。

そこはこのトレンドを見極めることによって、ブランドが意思表明をすることで共感を生めるということがあるのではと思っています。わたし自身、そういったことが増えたらよいのにと、広告代理店時代からずっと思っていたのですが、いまのオーディエンスの反応を見ると、もしかしたらそうなっているのかもしれないと思いましたね。

──とても貴重なデータだと思います。今後さらに対話を拡げながら、ある種のコモンズのようなかたちでインサイトを導き出していくことは考えているのでしょうか。それともビジネス寄りのツールとして使っていくイメージでしょうか。

橋本 正直に言うとまだ決まっていません。今回のアプローチがよかったのかどうかも、反響を見ながら判断していきたいと思っています。例えば7つのトレンドについても、特にそれにこだわっているわけではなく、いろいろな方との対話を通じて生まれた結果です。もともと英国の調査だったものを、日本ではこんな感じだよねということでつくったものなんです。

むしろほかの切り口から、日本の今後をどうウォッチし続けていればよいのかという流れになれば、われわれとしては全然ウェルカムです。こういうのはどうなんだろうといった話があれば、その観点から分析したりヒアリングしたりということは、新しいソートリーダーシップのかたちとして、すごく興味深いと思っています。

2011年と2020年のTwitter

──日本のインサイトを加えていくということですね。

西村奈津子(Head of Communications 以下:西村) わたしが今回のデータを拝見して個人的に納得したのが、日本人はやはり東日本大震災を体験しているからか、パンデミックでも少しほかの国の人よりも対処の仕方が小慣れていて、我慢するというか、自分たちでコントロールできないことがあって、それがいつ起きるかわからないけれど、なんとなくそれを受け入れる、というところがある気がしていて。

──面白いですね。Twitterは2008〜09年あたりに日本では普及しだして、その当時のユーザーたちは、本当にいいコミュニケーションができたし、新しいつながりがあって、ある種のユーフォリアがそこにありました。そのことを『WIRED』でも書いているんですが、それが変わったのが東日本大震災でした。

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これは思想家の東浩紀さんが言っていたのですが、特にITサーヴィスなどでは、リテラシーが高くてリベラルな人たちが初期には集まってきやすく、そういうコミュニティが形成されやすいんだけれども、それが拡がっていくにつれてあらゆる人たちが入ってくるので、悪い言い方をすれば場が荒れてくる、初期のよさがなくなっていくことが繰り返されます。

そして、2011年はユーフォリアの頂点でもあったし、それが瓦解する端緒でもあったわけです。あそこから日本のソーシャルメディアも質的に変わり、例えば原発をめぐる言説によって分断も生まれました。その意味で、2020年はTwitterにとっての次の分水嶺になるのかもしれません。

橋本 11年当時は著名な個人というか、アルファツイッタラーみたいな人がいて、ほかのメディアでも有名な医療従事者の方がTwitterでも何かを言うという構図でしたが、いまはフォロワーが多いわけでなくても、あるトピックに関して知見をもっていて、それを共有する人たちがTwitterのインフルエンサーになっていると個人的には思っています。そういった意味では11年当時より関心ごとも多岐に渡り、盛り上がるところもどんどん増えている。

──日本と海外でTwitterのタイムライン上での言論空間の形成のされ方は違いますよね。その良し悪しはありますが、よい面で言うと、ちゃんと議論が起こって、フェアな討議が起こっている。かつては声が大きい人や、現実に影響力がある人が議論を引っ張ってきたとすると、いまはそれを専門とした人の情報をきちんと誰もが見つけられるようになっているということでしょうか。

橋本 そう思っています。そこはやはり今後もTwitterのプラットフォームとして守っていくべきよさだと個人的には思っています。

「公共の会話の場」で起こっていること

──2011年から10年近くが経ち、Twitterは本当に世界のインフラになりました。いわば公共の広場のようなもので、そこでさまざまなことが起こっています。それは広場に集まった人々が起こしていることだけれども、少なくない人々が、それは広場そのものが悪いんだとも言っています。トランプ大統領が暴走しているのをTwitterが何とかしろとか、芸能人が自殺すると、Twitterが悪いんじゃないかという声も上がりました。

ソーシャルメディアという広場で起こっていることと、その場を企業として提供していることをどのように腑分けして考えればいいのかは、人類がまさにこれからきちんと議論していかなければいけない話だと思います。例えば政府は道路を全国津々浦々に敷くけれども、ではその道路で何かが起こったときの責任は誰にあるのか、という話とある部分では同じだと思うんです。

ただ違いがあるのは、Twitterは広場に人を集めることによって利潤を得ている企業であるという点です。その場合に、広場を管理するということをTwitterとしてどう考えられているのかうかがいます。

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ADA DASILVA/GETTY IMAGES

例えば今回の大統領選で議論になったのが、トランプの選対の発言にラベルをつけるということをTwitterはやったわけですけど、ソーシャルネットワークのプラットフォームに対して、民主党というかリベラルな人たちは、よろしくない発言があったらきちんとそれを取り締まるのがプラットフォームの責任だと言うんだけども、共和党の人たちは逆に、表現の自由を一企業が規制するなんてけしからんといって、まったく逆側から批判しているわけです。

それはどちらが正しいというよりも、社会は常にその間で落としどころを見つけていくしかないわけですが、例えばあからさまな差別や誤情報があって、それが一国の政治を決めてしまうような明らかな陰謀論だったときに、プラットフォームを提供する企業としてそれを正す責任があるのか、あるいは表現の自由というものがあって、プラットフォームがそこに手を入れるべきではないと考えているのか、おうかがいできればと思います。

服部聡(公共政策本部長 以下:服部) まさにいま言われたように、表現の自由と、ユーザーの方々にわれわれのプラットフォームで健全な会話を安心して楽しんでいただく、このバランスに頭を悩ませています。「公共の広場」とおっしゃっていただきましたが、われわれは自社のサーヴィスを「公共の会話の場」と捉えています。それを提供する上で、一方では表現の自由がありますが、皆さんに健全かつ安全に使っていただくために、Twitterというサーヴィスの理念に基づいたTwitterルールをかなり細かく定めています。

利用者の皆様にこのルールをきちんと守っていただくのが大前提となります。それから、各国の法律にも準拠しています。例えば日本の法律に違反しているようなことがあれば、裁判所命令にしたがってコンテンツの削除を行なったり、警察からの要請で発信者の情報開示をしたりもしています。ですので、きちんとルールをつくり現地の法律にもしたがう一方で、表現の自由という枠内ではユーザーに自由に発言していただくわけです。

米大統領選においてTwitterがアクションをとっているのは、政治的なメッセージや立ち位置に対してではなく、選挙制度に対する誤解であったり、人々を誤った方向に誘導させるような情報に対してです。ですので、民主党だからとか共和党だから、あるいは自民党だから国民民主党だからといったことではまったくありません。ただどうしても、アクションをとられた方は声を大きく上げるので、一般ユーザーからの見え方は違ってくるのかもしれません。いずれにせよ、特定の政治思想や議論が駄目だということはなく、Twitterルールなり法律に違反しているかどうかが基準になります。

──ありがとうございます。プラットフォームに対しては、何かアクションをとったことへのリアクションと同時に、プラットフォーム側が何もアクションをとらないことへの批判もあります。

服部 ルール違反のツイートを削除・凍結したり、問題のあるツイートにラベルをつけると、介入していてけしからんという批判の声があり、一方でこんな誹謗中傷コンテンツやヘイトスピーチを放置しているTwitterはけしからんという批判もあります。

ただ、われわれは定められたルールなり現地の法律に基づいてきちんと対応はとっていますので、対応していないものについてはそれなりの理由があるんです。そこは、批判している方にとっては納得できないものかもしれないけれど、実際それは違法でもないし、Twitterルールにも違反をしていない。ここは、今年の春あたりから日本でも話題になっている誹謗中傷の議論とも関係してくるところです。

そもそも誹謗中傷とは何か

服部 そもそも誹謗中傷とは何かを、改めて考える必要があります。Twitterでは、違法な情報や権利を侵害するような情報に関しては、Twitterルールや日本の法律に基づいて確実にアクションをとっています。一方で違法でもないし権利侵害でもないけれども、自分にとっては気に入らないとか、納得できないこと、反論や反対意見、好き嫌いといった個人の感想、そういったものもひとまとめに誹謗中傷という曖昧な言葉で扱われているという状況もあると思います。

日本は欧米などに比べてディスカッション文化もないですし、ちょっと反論されると誹謗中傷されたと反応してしまうところもあるかもしれないので、ここはリテラシー教育も含めて取り組む必要のある分野だと思っています。インターネットが多くの方に開かれたプラットフォームである以上、自分と必ずしも同じ意見をもたない人も当然いるという前提で使っていただく必要があるわけです。もちろんそのなかで、Twitterルールに違反した攻撃的な内容だったり違法な場合はきちんとアクションをとってもらえるという安心感、信頼感を利用者の皆さまにもっていただくのが重要だと思っています。

──一方でTwitterでは2020年に、リプライをつけるのを制限できる機能を実装されました。これは逆に、アーキテクチャーによってある程度状況を改善しようという意図でしょうか。

服部 おっしゃるように、プロダクトサイドからもユーザーの安心、安全といったものをある程度確保する手段を提供しています。リプライだけではなくて、例えばブロックやミュート機能、あとはアカウントの非公開設定といったものも、同じようなカテゴリーに分類される機能で、ユーザー自身が自分を守るためのツールとして提供しています。

──そうした機能による手応えはいかがでしょうか。ちょうど先日、リツイートをする際に一度リマインドをかける新機能がまた取りやめになりましたよね。そのように正解のないなかでユーザーにとって何がベストなのか、常に試行錯誤を重ねられているんだなと改めて思いました。

服部 試行錯誤しながら進めています。今回も大統領選に向けての変更を、12月16日の段階で一度元に戻しました。大統領選に向けた一連の取り組みについては、反応や効果についての分析、評価をちょうどいま行なっている最中で、詳細なものを来年に公表予定となっています。そういった計測や評価も踏まえてプロダクトをアップグレードしていければと考えています。

そういったプロダクトの変更を行なう際には、必ず世界のどこかの国とか、一定のユーザー層を対象にしたテストを実施した上でグローバルのローンチをしています。また、外部の諮問機関にご意見をうかがったり、今回の認証済みバッジの制度のように一般のユーザーからも広く意見を募って、その声をTwitterのポリシーづくりに反映させています。

アテンションエコノミーと広場

──法律とポリシーの話に戻ると、明らかに違法の場合だけでなく、違法なのかどうかわからないというグレーな部分も多いのではないかと思います。Twitterとしてルールがあっても、それを破った人への実行力がどの程度あるのかは、また別の問題ですよね。それこそ社会や職場に出てみれば、普通にさまざまな差別もあればヘイトも依然としてあるのが残念ながら現実です。

それは広場に集まってくる人たちの民度を上げていくしかないという話でもありますが、何か強烈な意見や社会を分断させるような攻撃的なものだったり、あるいは誰かにネガティヴなことを言ったものに対して、脊髄反射的に人々が反応してしまうという生物学的な問題、つまり脳がハックされている現状が一方であるわけです。

関連記事:人間はハックされる動物である

ソーシャルメディアは、ある意味でそうした脊髄反射的な盛り上がりによって広場に人々が集まれば集まるほど広告ビジネスとしては儲かるという構造になっています。もちろんわれわれメディアも広告ビジネスという点で同様ですが、広場で起こっていることについては「民度の問題だからプラットフォーム側の問題ではない、ただ広場を提供しているだけです」とは言い切れないと思うんです。人々のアテンションを取るメディアとして、そこはどう考えてらっしゃいますか。

服部 バランスをどうとっていくか、これからも課題であり続けると思っています。例えば先ほどの引用ツイートを推奨する取り組みも、そういった脊髄反射を防ぐのに一定の効果はあったと思います。実際に大統領選期間中の測定では、リツイートそのものは20%以上低下しています。ただ一方で、引用ツイートに実際その人がどれくらいコメントをつけたかというと、大半が短い一言のコメントだったり、あとはツイートの量そのものが減ってしまったというのがあります。減ったことで誤情報の拡散を抑制できた一面もあると思いますが、会話そのものが減ったのがどこまでよかったのかというのも、今後は分析検討を進めていく価値がある分野だと思っています。

ツイートしにくくするとか、あるいは事前にメッセージの中身をチェックするといったことを、表現の自由とのバランスのなかでどこまでやっていいのか、やるべきなのか、そこは難しい問題です。一企業でできることをわれわれとしても探っていく一方で、業界として、あるいは社会として考えていく必要があると思っています。

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──もうひとつ、昔から言われているエコーチェンバーのように、ソーシャルメディア空間がタコツボ化していく点についてうかがいます。これは米国の話ですが、ティーンズの自殺が10年でとても増えていて、ネガティヴな考えをもったときに、それがソーシャルメディアを介して増幅されるという問題が指摘されています。若い人たちがオンラインにいることが当たり前になったときに、同じ情報がどんどんレコメンドされることである種の思想なり感情が増幅されていく構造についてはどう考えてらっしゃいますか。

服部 Twitterはオープンなプラットフォームである点で、ほかのプラットフォームやリアルの生活と比較しても、エコーチェンバー外の人の声に触れる機会、あるいはエコーチェンバーの外にいる人から声をかけられる機会が多いのかなと思います。

自殺についても、もちろん不幸な事例もありましたけれども、一方で多くの善意のNPOとか専門家、公的機関が、Twitterを利用してそういった悩んでいる人を自ら見つけに行って声をかけるという取り組みをされていらっしゃいます。おそらくリアルな社会ではそういったことは起こらないでしょうし、友だち同士のクローズドなプラットフォームでも起こらないでしょう。Twitterだからこそ、検索して知らない人にメッセージを送ることができるわけで、それで助かったという人もいらっしゃると思います。

自殺のことを調べるつもりで検索をしたら、相談機関とか、同じ悩みを抱えた人のことが検索結果に出てきて、なんか救われたなとか、ガス抜きができたという人もいると思います。もちろんわれわれとしては、マイナス部分は改善する必要があると思っていますけども、そういったプラスの面に目を向けて、Twitterの強みというのを伸ばしていきたいと考えています。

──例えば自殺について思い詰めて検索をしたときに、逆にプラスになるような情報をぽんと出すといった、よい意味での介入といったことをされているのですか。

服部 自殺関係のワードを検索すると、自殺の相談機関が検索結果のトップに表示される仕組みになっています。同じ仕組みで自殺だけではなくて、ワクチンについての言葉を検索すると、厚生労働省のワクチンのページが出てきます。新型コロナウイルス感染症のことを検索するとやはり厚生労働省のページが出てくる。あとは家庭内暴力(DV)に関する言葉を検索すると、内閣府がやっているDV相談の連絡先が出てきます。少しでもユーザーを信頼できる情報源につなげることで、健全性、安全性といったものを確保したいと思っています。これは投稿内容について直接対応するわけではなく、あくまでも検索結果に対して対応することでプライヴァシーにも配慮しています。

若者は怖がっているのか

──最近、若い人たちからTwitterが怖いといった声をよく聞くように思います。要するに、ログとして残るし、何か発言するとすぐ皆に怒られるので怖いし出ていけないというものです。ソーシャルメディアが、言うなれば公共の場で拡声器を使って皆にわーっと何かを言う行為だとすると、それを怖がるのもある意味で当然ですが、若い人が世界に向けて発言できる場がせっかくあるのに、怖いといって敬遠されてしまうのはもったいなくもあると思うんです。

服部 実は若者だけではなくてシニア層からも、Twitterってすぐ炎上しそうとか、コントロールされないからと利用を躊躇されることがありますので、残念ながらそういったイメージを一定の方にもたれてしまっていると思っています。そこはTwitterとして、既存のユーザー、潜在的なユーザー、それからクライアントにも、Twitterの本来の正しいあるべき姿、そしていまやっていることをきちんと理解していただくための取り組みがますます必要だと思っています。

一方で、公共の広場で何か悪いことをしたらみんなに怒られるというのは、逆に言うと自浄作用が働いているという見方もできます。また何をしてもほったらかしなのではなく、ルールに違反する行為や違法なことをした人には、Twitterが凍結とか削除などの対応をルールに基づいてちゃんとやってますということを理解していただく必要があって、こうしたことを通してTwitterに対する恐怖感とか不安感を取り除いていく必要があると思っています。

──若い人が怒られるというのは、必ずしも悪いことをしたからではなくて、例えば女性のタレントが政治的な発言をしたら生意気だと言われ、何かを好きと言っても嫌いと言っても叩かれるようなところを、多分怖いと言っているんだと思うんです。10代20代って精神的に繊細だし、自分を守るというか、傷つきたくないというのがすごくあると思うんです。

服部 あらゆる方が不安に思うことなく自分の思いを発信できる場としてTwitterを使ってもらいたいというのは、最高経営責任者(CEO)のジャック・ドーシーもずっと昔から言っていることです。一部の方が発言することを躊躇するような空気感そのものは、やはり変えていく必要があると思っています。

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マスメディアが拡散する炎上

服部 その上で、先ほどおっしゃった、若者が発信すると生意気だと怒られたりとか、芸能人が政治的な発言をすると叩かれるというのは、おそらくソーシャルメディアだけではなくて、既存のテレビでも同じことが起きると思うんですね。つまり、ツイッターだから、SNSだからという部分って実はあまり多くないんです。SNSでも確かに起こっているんだけど、それが実社会でも起こっていることの縮図にすぎないということを、改めて多くの方々に認識していただく必要があるのかなと思います。

西村 ツイートが社会を混乱させている、と言われる事象も、実はTwitter起点ではないケースも多々ありました。例えば、トイレットペーパーがなくなるから皆で買いに行けという話をTwitter利用者がしていたわけじゃなく、「トイレットペーパーがないってテレビが言ってたから〜〜だよ」という会話をしているんです。

東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫准教授の研究でも、トイレットペーパーがないというデマがインターネットで拡がったとテレビでは言っているんだけれど、実際はトイレットペーパーがないというデマを拡散したツイートはサンプルのうち18件しかなく、「トイレットペーパーがなくなるというデマをツイートしている人がいるから注意しよう」という注意喚起が広まったことがわかっています。しかし、そうした細かい経緯をきちんと説明しないまま、または確認がなされないまま大手メディアで伝えられ、最終的にはTwitter上にデマがあふれているかのようなイメージがで出来上がってしまいました。

また、コロナ禍で外出自粛が呼びかけられるなか、「#東京脱出」というハッシュタグつきのツイートが急増している、という話も大手新聞社さんが記事にされ、注目を集めました。しかし、これも前出の鳥海准教授によると、記事が出る前に実際にそうツイートしていた人は28人しかいなかったそうです。しかしながら、それを全国紙が書いた途端に、どうやら若者が勝手な行動をとろうとしているらしいという、事実とは異なる方向で会話が盛り上がってしまった。

事の成り行きや背景が細かく検証されないままテレビや新聞で報道され、それが既成事実になってしまい、その後Twitterでそれが会話にのぼり、その時点で現象を確認しにきた人たちにあたかもTwitterが震源地のような構図に見えてしまうのだと、わたしたちも今回の騒動を通してすごく学んだんです。

──そこは重要なご指摘ですね。データからもそれが見えているんですね。

西村 例えば誹謗中傷というキーワードがTwitterのトレンドに上がったこともあったんですけど、それは誹謗中傷を誰かに言っているのかというとそうではなくて、あの人に誹謗中傷があったのをワイドショーで見たといった、誹謗中傷についての話をしているんですよね。実際、われわれも目視で確認してみたことあるんです。無作為に1,000件ピックアップして、そういうけしからん投稿がどれくらいあるのかを見てみたんですけど、1,000件中1件だけだったという状況でした。

また、Twitter利用者の権利と表現の自由や言論の自由を守る視点から考えてみると、一般利用者側のモラルだけが問われる現状も変わっていけばいいなと思っています。Twitter上では、芸能人だろうが大手メディアだろうが一般人だろうがフラットな立ち位置であるはずで、誰しもに等しく発信する権利とそれに付随する責任が伴います。メディアでの振る舞い、コンテンツのつくり方に原因があるケースについてももっときちんと検証され、報道されてもいいと思います。

鬼頭正己(広報) フラットな立ち位置という部分は、結構誰もがまだできていないところで、先ほどの10代の人たち不安感もすごくわかるんです。一方で、検証されていないのが、心無い発言をしている方の中身ですよね。なぜそんなことを言ってくるのか、というのが一般社会でもなかなか検証されていないことなのかなと。

ただマーケティングのような分野で見ると、どこどこの製品が悪いとか、使い心地が悪かったという批判、これは実際に宝として使われているんです。自分本意のヴィジョンだけではなく、実際の購入者はまた違った観点からものを見てくるので、先進的な企業は批判をあえてお金を払ってまで知ろうとするんですね。要するに、批判をされている意味のところに深く入っていっていくわけです。

社会的にはどうしても被害者救済にスポットライトが当たり、それは当然なんですけれど、ひとつ忘れているのが心無い発言をする側なんですね。どうしてこの人がTwitter上で変なことを言うのか、それが研究されていないことが露呈してきたと思っています。大手メディアの方々にとっては、ポイントは被害者をどう救済し、問題を社会に啓発していくかというもので、Twitterで心無い発言をする方のメンタリティとか立ち位置は、裁判になってようやくでてきたりします。

これはマーケティングの話とまったく同じというわけではないんですけども、心無い発言をする人はなぜそう言うのかについては、社会全体として前進するために研究がもっと必要なのではないかと感じているところです。

──ありがとうございました。メディアも含め、社会そのものを少しでも前に進めていくためにさらによい空間をつくっていくのは、まさにあらゆるプレイヤーが一緒になってやっていくことなので、ぜひこれからも継続的に、お話をうかがい議論させていただけたらと思っています。

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